沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい
ルカによる福音書5章4節
ゲネサレト湖畔で漁師たちが網を洗っていた。彼らは夜通し働いたが、不漁だった。網を洗う彼らの背中に、失意と不安を抱えて生きる人間の悲しみが浮かんでいる。主イエスは彼らに声をかけ、船に乗せて少し漕ぎ出してほしいと頼んだ。そして、腰をおろして船から海辺にいる人々に教えた。話し終わると、主イエスはシモンに今日の聖句を語って、彼の行動を促した。
陽が高くなってから、しかも、沖に出て漁をせよという主イエスの言葉は、長年漁師として培ったシモンの経験と常識を超えていた。彼は「先生、わたしたちは、夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」(5節)と答えた。自分の経験や常識を超えているが、「しかし」と言って、シモンは主の言葉に従った。すると、沢山の魚がかかり、網が破れそうになった。シモンたちは主の言葉に従うことによって、自分たちの経験や常識を超えた世界を知った。
「沖」は原語では「深い所」である。「深みに乗りいだし、網を下して漁れ」(文語訳)。主イエスはシモンたちを沖の深み、見えない世界に漕ぎ出させた。主イエスが招くのは、見えない神の国である。私たちが主の言葉に促され、信じて従う時、この見えない深みの世界を知るようになる。この深みの世界が、見える世界で生きている私たちに希望を与える。悲しみや苦しみに打ちひしがれそうな私たちに、生きる勇気を与える。困難の中にいる方が心の支えを聞かれて、「聖書に巡り合ったことで、小さな世界と大きな世界の両方を見られるようになったことです」と答えた。
著者:内藤淳一郎 (1999年〜2014年 当教会主任牧師)
2020年にクリスチャンプレスに掲載されたご本人のインタビューを下記のリンクよりお読みいただけます。 https://christianpress.jp/naitou-junichiro/
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この朗読は『一日の発見 365日の黙想』の著者、内藤淳一郎氏の許可を得て、日本バプテスト連盟西川口キリスト教会が作成し毎日発信しております。