ただひたすら注意してあなた自身に十分気をつけ、目で見たことを忘れず、生涯心から離すことなく、子や孫たちにも語り伝えなさい。
(申命記4章9節)
「申命記」とは、どのような内容の文章であろうか。「申命記」は、近い将来カナンに入るであろうイスラエルの民を前に、神から頂いた教えと戒めをもう一度語る、モーセの訣別説教という文学的形式をとって書かれたものである。しかし、実際に「申命記」が形成されたのは、分裂王国末期からバビロン捕囚の時期であった。イエスも、パウロも、「申命記」に親しみ、度々引用した。つまり、モーセの時代に与えられた神の教えと戒めは、後の世代の者たちにとっても、変わらず重要であったということが分かる。
それでは、21世紀の日本に生きる我々にとってはどうであろうか。やはり我々も、旧約聖書を通して与えられる神の教えと戒めの中から、大切なメッセージを自分のものとして頂くことができるのである。それは、「唯一の神、主を愛せよ」「真の神礼拝をささげよ」「神の御心に沿って、神と、隣人と、社会との関係を正しく整えよ」というご命令である。
我々は、日々新たに、神の教えと戒めを思い起こし受け取りなおしていきたい。また、「新しいイスラエル」である教会は、頂いた神の教えと戒めを新たな人々に語り継いでいく務めをも神から頂いている存在でもある。語り聞かせても、すぐには理解し受け入れてもらえないかも知れない。しかし、まかれた種を最善の時に大きく成長して下さる神がおられる。我々は、そのことを信じ、委ねつつ、語っていけばよいのである。