西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
今月の主題…「主なる神が用いられる器」
◆前回からの流れ
前回は、13章から始まる士師サムソンの誕生でした。その時代、イスラエルの人々が神に忠実でなくなったために、神の懲らしめで、隣国のペリシテ人に対して軍事的に立場が弱くなっていました。特にペリシテと領土を接するダン族やユダ族が、影響を強く受けていたようです。聖書の巻末の地図の「3カナンへの定住」をご参照下さい。サムソンが生まれたのは、塩の海の北部から西の地中海方面にあるダン族の領内で、南端の国境にあるペリシテ領ティムナに近いツォルアの町でした(この町は地図に載っていません)。ただし、地図に表記があるティムナが、サムソンの妻となった女性が住んでいた町です。ティムナと合わせて、話の中でサムソンが攻撃して婚礼の景品を手に入れることになるアシュケロンの町の位置も確認して置きましょう。その町は地中海沿岸にあります。また、今回の舞台となるユダの地ですが、地図上でペリシテとの境界線が明確ではありません。それだけ当時、ペリシテとユダとの間で領地の奪い合いが頻繁に繰り返されていたことが伺えます。
<原則として、ご自分で聖書本文を読み、黙想してから以下の文章、聖書教育誌、その他の参考文献を読むことをお奨めします。また、黙想の際に聖書地図で確認し、違う聖書訳を比較して読むこともお奨めします。>
※『聖書教育』誌は日本バプテスト連盟発行の教会学校教案誌です。詳細は下記のURLでご照会下さい。 http://www.bapren.com/index.html (『聖書教育』ホームページ)
◆黙想のポイント
サムソンが発揮する人並み外れた力の背後には、常に神の御手が働いていることを文中から確認しましょう。
◆今回の箇所
15:9 ペリシテ人は、ユダに上って来て陣を敷き、レヒに向かって展開した。15:10 ユダの人々は、「なぜ我々に向かって上って来るのか」とただしたところ、彼らは、「攻め上って来たのはサムソンを縛り上げ、我々に対する仕打ちのお返しをするためだ」と答えた。15:11 ユダの人々三千人が、エタムの岩の裂け目に下って行き、サムソンに言った。「我々がペリシテ人の支配下にあることを知らないのか。なんということをしてくれた。」サムソンは答えた。「彼らがわたしにしたように、彼らにしただけだ。」
>>>サムソンの故郷であるダン部族の領土のすぐ南がペリシテ人の支配地域で、その東側がユダ部族の地でした。どうしてそこにいたのかは定かではありませんが、サムソンはユダ族の領地にあったエタムの岩の裂け目に身を寄せていました(8節)。三千人でサムソンを捉えに来たユダの人々に事情を問い詰められたサムソンは「彼らがわたしにしたように、彼らにしただけだ。」と答えていますが、彼ら(ペリシテ人)は何をしたと言えるでしょうか。14章~15章8節を読んで少し、考えて見てください。…特にサムソンの婚礼に出席したペリシテ人たちがしたことと、サムソンが結婚した妻と家族にペリシテ人たちがしたことに注目しましょう。
14章では、成長したサムソンが神のご計画により、隣町のティムナに住んでいるペリシテ人の女性が好きになります(4節)。話の流れから、ペリシテ人の中にもサムソンの友人たちがいたことが伺えます。結婚の申し入れをしに行く日に、神の特別な助けにより、道中で襲い掛かってきた若い獅子を撃退します(6節)。後日、婚礼の日の道中、退治した獅子の死骸には不思議なことに蜜ができていました。それを、婚礼の時の景品付きなぞ解き問題として出します。招待客たちは、サムソンの妻を脅迫してサムソンから答えを引き出すことに成功し、不当な手段で景品を手に入れます。そこでサムソンは、地中海沿岸のペリシテ人の地アシュケロンの町を襲って、景品を不当な手段で手に入れるという話が展開します。それから彼は、怒って妻を連れずに地元に帰ってしまいます(19節)。続く15章では、しばらく経って、サムソンは妻が他の家に嫁いだことを知って激怒します。ユダヤ教において、事情はどうであれ、本人に断りもなく、妻を他の家に嫁がせることは重罪でした。そこでサムソンは、それを容認した村のペリシテ人たちの畑を、動物(ジャッカル)を使って焼き払って報復します。それを知ったペリシテ人たちは、ことの発端となった妻とその父に責任を取らせて虐殺してしまいますが、今度はそれを理由に、サムソンはさらにペリシテ人たちに報復し、サムソンとペリシテ人たちとの間がさらに険悪になった状態で、今回の話へとつながります。
15:12 彼らはサムソンに言った。「我々は、お前を縛ってペリシテ人の手に渡すためにやって来た。」サムソンは言った。「あなたたちはわたしに害を加えないと誓ってくれるか。」15:13 彼らは言った。「我々はただお前を縛って彼らの手に渡すだけだ。殺しはしない。」彼らはこうして、新しい縄二本でサムソンを縛り、岩から連れ出し、上って来た。15:14 サムソンがレヒに着くと、ペリシテ人は歓声をあげて彼を迎えた。そのとき、主の霊が激しく彼に降り、腕を縛っていた縄は、火がついて燃える亜麻の糸のようになり、縄目は解けて彼の手から落ちた。15:15 彼は、真新しいろばのあご骨を見つけ、手を伸ばして取り、これで千人を打ち殺した。15:16 そこで彼は言った。「ろばのあご骨で、ひと山、ふた山/ろばのあご骨で、千人を打ち殺した。」15:17 こう言い終わると、彼は手に持っていたあご骨を投げ捨てた。こうして、その場所はラマト・レヒ(あご骨の高台)と呼ばれるようになった。
>>>サムソンは、ユダの人々とは争わずに厳重に縄をかけられ、ペリシテ人たちに引き渡されます。14節で証言されていることは、主の霊が激しくサムソンに働いたことと、主の御業によって彼に掛けられていた縄がほどけて落ちたということです。この時、神の臨在と介入があったことが語られています。サムソンの勝利の背後に神の御手があったことが強調されています。
15:18 彼は非常に喉が渇いていたので、主に祈って言った。「あなたはこの大いなる勝利を、この僕の手によってお与えになりました。しかし今、わたしは喉が渇いて死にそうで、無割礼の者たちの手に落ちようとしています。」15:19 神はレヒのくぼんだ地を裂き、そこから水が湧き出るようにされた。彼はその水を飲んで元気を取り戻し、生き返った。それゆえ、その泉はエン・ハコレ(祈る者の泉)と呼ばれ、今日もレヒにある。15:20 彼はペリシテ人の時代に、二十年間、士師としてイスラエルを裁いた。
>>>サムソンは通常考えられないほど大勢の人と一人で戦いました。多くを倒しましたが、これ以上戦えないほどに喉が渇きます。その時に彼は、死を覚悟する代わりに神に助けを祈り求めます。どんな状況の時にも、常に神に依り頼む信仰を持ち合わせていたサムソンでした。サムソンが神に士師として用いられた理由が垣間見える場面です。
◆話し合いのポイント
- 聖書教育誌の「話し合いのポイント」および少年少女科の「活動」などを参考にして下さい。
- 青年成人科の「話し合いのポイント」や少年少女科の「おはなし」少年少女科のコラムも考えさせられます。