あなたはしかし、そこに渡って行くことはできない。(申命記34章4節)
イスラエルをエジプトの地から導き出した神の働き人モーセの生涯は波乱万丈のものであった。とりわけエジプトからカナンへ向かう旅を先導する中で、大勢の人々を40年もの間、叱り、教え、執りなしつつ導いていく働きはどれほど困難なものであったことか。しかしモーセは悩みつつも、最後までその働きから降りることをしなかった。神への信仰と信頼のゆえである。
そのモーセにとって「約束の地」カナンに入ることはまさに悲願であったと言ってよい。しかし神はモーセに美しい「約束の地」を見せつつも「あなたはそこに渡って行くことはできない」と告げる。「約束の地」は神の大きな計画の中で「ご褒美」「ゴール」ではなかった。イスラエルの歴史は新たな困難の局面を迎えつつ新たな指導者を与えられ続いていく。モーセは神から与えられた役目を果たし終え、カナンよりもっと素晴らしい「天」という「約束の地」へと移されていった。万感の思いでピスガの頂に立ちつくす一人の信仰者の最期の姿がここにある。我々もそれぞれに「ピスガの頂」に立たされるその日まで、神と人とに仕え、与えられた使命と人生を走り抜きたい。;;”231″