西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
『これを聞いた人々が、「それでは、だれが救われるのだろうか」と言うと、イエスは、「人間にはできないことも、神にはできる」と言われた。』
ルカによる福音書18章26~27節
神から受け継ぎ、継承していくことが求められているものを、聖書で嗣業(しぎょう)と言います。私たちバプテストに神が託して下さっている嗣業、つまり大切な使命や信仰理解があるとするならば、それはどのようなものでしょうか。ご一緒に考えて行きます。今月は特に聖書主義を取り上げます。
バプテストは他のプロテスタント同様に聖書主義を大切にする教派です。聖書のみが、信仰の唯一の規範であり、聖典とする立場です。他教派のように聖書以外に使徒信条のような特定の信条を教派の共通理解とするようなこともありません。聖書主義は、イエスの時代のユダヤ人たちも大切にしていたものです。今回選んだルカによる福音書の10章と18章の2箇所は、イスラエル社会において聖書に詳しく、人々から尊敬されている人々が主イエスに会いに行き、信仰問答をする箇所です。これらの登場人物の関心は、永遠の命を確実に受け継ぐには何が必要かということでした。10章では律法を厳守すれば永遠の命を手に入れることができる可能性が残る内容です。しかし、18章と合わせて理解する時に、永遠の命は自分の努力で手に入れることは不可能だという結論になります。肝心なのは、ヨハネによる福音書3章16節に「独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」とあるように、主イエス・キリストを信じて仰ぐ信仰が永遠の命を得るための最大の鍵であることが明確になります。このことから、聖書主義に立つ前提として、常に複数箇所の証言を元に聖書の真実性を確認していくことの必要性が分かります。
互いに聖書理解において誤りやすい者であることを自覚し、謙虚に神の言葉に向き合い、共に集って聖書を通して理解を深め合い、お互いの考えを分かち会うのがバプテストの伝統なのです。