西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
『彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。」』 創世記11章4節
ノアの洪水物語の時のような世界の腐敗した状況とは違い、バベルの塔の話では人々が一致協力して世界一高い塔のある町を建てる一大事業に取り組んだことが語られます。場所は現在の中東にあるチグリス・ユーフラテス川流域。聖書でも世界最古の帝国がニムロデによって誕生したと10章で語られている場所です。当時の最新技術であったれんがやアスファルトを用いて前代未聞の超高層建築に人々が挑んだのです。しかし、シンアルの地の住人たちの試みは、神の目に罪深い行為と見なされたのです。
この理由については、当時の人々がどのような共通認識を持ちながらバベルの塔を建てたのか、上記4節の言葉に注目する必要があります。ヘブライ語の原文には「ラーヌゥ」つまり「私たちのために」という言葉が存在します。これを文中に当てはめると「さあ、私たちのために天まで届く塔のある町を建て、そして、全地に散らされることのないように私たちのために有名になろう!」となります。このように訳すと、神不在の生き方をしていた当時の人々の姿が浮き彫りになります。そもそも神はアダムの時も、ノアの時も「産めよ、増えよ、地に満ちよ」、つまり全地に広がるように命じています。その神の根本的な使命を無視して、「全地にちらされることのないようにしよう」と団結し、神の名声ではなく、自分達が有名になることを望んだのがバベルの塔の建設だったのです。
歴史は繰り返します。キリストが復活して昇天された後も弟子たちは世界に広がって福音宣教を展開せず、長くエルサレムに留まり続け、共同体に不一致が生じた話が語られています。そして、教会に対する大迫害がきっかけで全世界に福音宣教が始まって行ったと使徒言行録6章~8章は伝えています。これらの話は現代にも通じます。私たちの教会はどうでしょうか。真実に神さまの御心の実現のために一致し、外に向かって協力伝道できるように、また様々な困難の中にある人々の隣人になれるようにと願わされます。