2025年12月21日(日) 主日礼拝 宣教要旨
聖書箇所:ルカによる福音書2章8-14節
「あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」
(ルカによる福音書2:12)
ルカによる福音書2章8〜14節は、救い主イエス・キリストの誕生が最初に告げ知らされた場面です。その知らせを受けたのは、宮殿にいる王でも、神殿にいる祭司でもなく、野宿をしながら夜通し羊の番をしていた羊飼いたちでした。待降節(アドベント)第4主日、クリスマス礼拝として、私たちはこの「飼い葉桶の平和」から、神様がどのような方であり、どのような平和をもたらしてくださるのかを深く受け取ります。
第一に、聖書は「飼い葉桶のしるし」を明らかにしています。天使は羊飼いたちに、救い主のしるしとして「飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」を告げました。「メシア」とは神様から遣わされた特別なお方ですが、その方は王宮の立派なベッドではなく、家畜小屋の飼い葉桶に寝かされていました。「泊まる場所がなかった」からです。神の子は、社会の中心ではなく片隅に、権力や富とは無縁の、最も小さく弱い姿で来てくださいました。そしてこの知らせを最初に受けたのは、社会から蔑まれ、共同体の交わりからはじき出されていた羊飼いたちでした。ここに、神様がどのような人々に目を注いでおられるかが、はっきりと示されています。
第二に、聖書は「飼い葉桶から始まる平和」を教えています。天使たちは「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」と歌いました。当時は「ローマの平和」と呼ばれる時代でしたが、それは強大な軍事力によって維持された、支配者にとって都合の良い「平和」でした。天使たちが告げた「平和」は全く異なるものでした。「飼い葉桶から始まる平和」とは、社会の片隅に追いやられた人々のただ中に神様ご自身が来てくださることから始まる平和です。上から押さえつける平和ではなく、小さくされた者と共に歩んでくださる神様がもたらす平和なのです。
第三に、聖書は「賛美と共に歩む場所」を示しています。天使たちの歌を聞いた羊飼いたちは、飼い葉桶に眠る乳飲み子を見つけ、「神をあがめ、賛美しながら帰って行った」(20節)と記されています。羊飼いとしての厳しい生活が変わったわけではありません。しかし、彼らの心は変えられました。神様が自分たちのような者に目を留め、救い主を見せてくださった。その現実が「賛美と共に歩む場所」に変えられたのです。クリスマスの喜びとは、厳しい現実が消えてなくなることではなく、その現実のただ中に神様が共にいてくださることを知ることなのです。
本日のクリスマス礼拝では、一人の方のバプテスマ式が行われました。バプテスマとは、イエス・キリストを救い主と信じ、キリストと結ばれて新しい人生を歩み始めることを表す儀式です。「地には平和、御心に適う人にあれ」。2000年前に夜空に響いたこの天使の歌声が、今日ここに集う私たち一人ひとりにも届いています。飼い葉桶から始まる平和が、私たちの上に、そしてこの世界に満ちあふれますように。メリークリスマス!