斎藤 信一郎 牧師
するとイエスは、「はっきり言っておくが、
あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。ルカによる福音書23章43節
ルカによる福音書は、主イエスと一緒に十字架に磔(はりつけ)にされた片方の囚人に焦点を当てています。今回の箇所を読むと、彼が罪を犯して捕まった前後のどこかで主イエスの福音に触れていたことが伺えます。もう片方の囚人が主イエスに対して「お前はメシア(救い主の意)ではないか。自分自身と我々を救ってみろ。」とののしったのに対し、彼は40節で「お前は神をも恐れないのか」と相手を注意しています。十字架に磔になるほどの重罪人の口から出そうにない言葉です。41節では「我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。」と自分の罪を自覚しています。しかも、主イエスが「何も悪いことをしていない」ことを確信している口ぶりです。そして、最も注目すべきなのが42節「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください。」という言葉です。当時、十字架に掛けられる人は特別に呪われた人であり、地獄に行くと誰もが考えていた時代でした。それにもかかわらず、彼がこのように言うことができたのは、主イエスから罪の赦しに関する福音を聞いていたことを示唆しています。彼は人生の終わりに十字架刑という最悪の裁きの座にありながら、死後の世界に対する希望を抱き、かつ主イエスに救っていただく可能性を見出しています。このような彼の信仰を受け止めて主イエスは「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と宣言されました。
楽園はギリシャ語でパラダイスと言います。ペルシャ語が語源の言葉で、王様が特別に栄誉を与えたい人を王宮殿に招き、その庭園で一緒に散歩するしきたりから来ている言葉です。主イエスが囚人に宣言したこととは、彼が確実に主イエスとパラダイス、即ち神が支配しておられる天の御国に移されること。そして主イエスと親しく散歩できるような関係に入れられるという約束でした。神の一人子であるイエス・キリストは、信じて仰ぐすべての人にこの救いの道を切り開いて下さったお方です。この約束が現代の私たちにも向けられていることを感謝し、分かち合いつつ、受難週を過ごして参りましょう。