林 健一 牧師(日本バプテスト太田キリスト教会)
「主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない」
詩編23編1節
詩編23編は、たくさんの人に愛されてきた詩編です。この詩編は古くから多くの人々に愛され、人々の心を慰め支えてきました。この詩が人々の心をとらえて離さないのは、美しい描写表現の言葉もありますが、背後にある詩人の神さまとの関係における体験の豊かさを語っているところからくるものではないかと思います。神さまの言葉は私たちの外と内を癒し、慰め、力づけるものだということを私たちにも語っているのです。
3節a「魂を生き返らせてくださる。」わたしの飼い主である主はわたしの魂を生き返らせてくれます。3節b「主は御名にふさわしくわたしを正しい道に導かれる」。この詩編23編が生み出された背景には神さまによるイスラエルの民の奴隷解放という出来事があるのです。人間として尊厳のかけらもない状態から主は彼らを救い、神さまを礼拝することのできる尊厳ある一人の人間へと救い出してくださった現在と過去における恵みを賛美します。神さまを礼拝することをとおして人間は真の人として歩んでいけることを語ります。
4節「死の陰の谷を行くとき」イスラエルの民が過去の旅路をふり返り、自分たちの歩みは生と死の狭間にあったということを告白します。しかしイスラエルは死の陰の谷を行くときも災いを恐れないと主なる神さまに賛美しました。なぜでしょうか。4節後半「あなたがわたしと共にいてくださる。」からです。ここから呼び名が「主」から「あなた」に変わります。最も苦しかったとき、死の危険のさなかにあったときに主なる神さまがともにいたことを賛美するのです。
主なる神さまが私たち人生の苦しみ、悲しみのときに共にいてくださるのです。ただいるだけ、それは無力な神さまではないか。いやそうではないのです。この共にいるということがどんなに力強くあり慰めを私たちに与えるものなのか。恵みの豊かさを知るのです。やがて4節後半「あなたがわたしと共にいてくださる。」と主を賛美することへと変えられていくのです。
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