斎藤 信一郎 牧師
『すると、また声が聞こえてきた。「神が清めた物を、清くないなどと、あなたは言ってはならない。」』
使徒言行録10章15節
聖霊降臨の出来事以降、フィリポやパウロを通して徐々に世界宣教が始まります。使徒言行録10章では、十二使徒のペトロの世界宣教を取りあげています。聖霊がペトロおよび信心深い異邦人コルネリウスという人に同時に働き掛け、地中海沿岸にあるカイサリアの人々が福音に触れていくことになります。はじめ、ペトロは神から幻を示され、聖書ではユダヤ人が食べてはならないとされている生き物を料理して食べるようにとの指示を受けます。躊躇するペトロに神が語った言葉が上記15節です。このことを通して、ペトロはすべての人が神の救いのご計画の対象になっていることを示されます。そして、異なる生活習慣や信仰理解を持っている人々に寄り添う福音宣教が必要だと理解していくことになります。
今回の聖書箇所は、ペトロの現地での福音宣教の場面です。すべての教会の模範となる5つの内容からなっています。最初にペトロが強調したのは、自分も常に信仰理解を神から正され続けている同じ求道者だという証し。二つ目は、主イエスがどのように人々に寄り添いながら宣教したかという内容。三つ目は、主イエスの十字架による贖いと復活について。四つ目は、神が全ての人を正しい福音理解へと導くため、敢えて信仰がまだまだ未成熟なペトロたちに宣教を託されたと言うこと。そして五つ目は、だれもが主イエスを信じる信仰によって罪の赦しと神の祝福を豊かに受けることができる、と宣教しました。その際、それまで語った内容は、聖書に登場する神の預言者たちの言葉であることを率直に伝えました。
現在、私たちおよび世界中の人々が、見通しの利かない、様々な課題と脅威にさらされながら生きています。このような時だからこそ、信仰の原点に立ち返って行動を導かれて参りましょう。歴史を振り返る時、どの時代にも国をまたぐ危機があり、その都度神は教会を支え、導いて来られたことに気づかされます。受難節最初の日曜日です。この先に復活の希望があることを見つめながら、共に聖霊に導かれて参りましょう。