斎藤 信一郎 牧師
<原則として、ご自分で聖書本文を読み、黙想してから以下の文章、聖書教育誌、その他の参考文献を読むことをお奨めします。また、黙想の際に聖書地図で確認し、違う聖書訳を比較して読むこともお奨めします。>※『聖書教育』誌は日本バプテスト連盟から発行されています。詳細は下記のURLでご照会下さい。 http://www.bapren.com/index.html (『聖書教育』ホームページ)
<事前に理解して起きたいあらすじ>
35章によれば、ヤコブ一族がパダン・アラムからカナン地方に戻る時、神はヤコブに、かつて夢でご自身を現されたベテルに行って住み、祭壇を築くように命じています。ヤコブはそれに従って旅を進めます。そのベテルで神は再び現れて、ヤコブの名前をイスラエルに変えるように命じます。その後、ヤコブはヘブロンに向かいます。そこはかつて祖父アブラハムが住み、父のイサクが住んでいました(37節以降参照)。その後、兄のエサウと協力して父の葬儀を行ったことが語られています。続く36章には、兄エサウがすべての財産を携えて死海の南東に広がるセイルの山地に移住し、エドム人の先祖となったことが語られています。そして37章からヨセフ物語が始まりますが、2節にあるように、聖書はこれらの内容を「ヤコブの家族の由来は次のとおりである。」とし、そして創世記はアブラハム、イサク、ヤコブの生涯に伴われた天地創造と救いの神の物語と位置づけられ、最後まで語られていくことになります。
なお、聖書教育誌の各単元ごとの内容に留まらず、日高嘉彦師が創世記概論で着目している、「着物」と「夢」という、ヨセフ物語に繰り返し登場し全体を結びつけている共通項にも注目して行きましょう。
教会学校では、聖書教育誌をメインにして下さい。この誌面では、主人公のヨセフの生涯が、様々な点でイエス・キリストの生涯を示唆する内容になっていることを取り上げて参ります。
◆黙想と分かち合いのポイント
聖書教育誌はシャローム=平和という言葉に着目しています。この箇所にはシャロームを乱す大きな原因の一つとして妬みがあります。私たちも人に対して寛容でいられなくなる時があります。そのような時、聖書はどう向き合うように教えているでしょうか。
◆ヨセフの夢
37:1 ヤコブは、父がかつて滞在していたカナン地方に住んでいた。 37:2 ヤコブの家族の由来は次のとおりである。ヨセフは十七歳のとき、兄たちと羊の群れを飼っていた。まだ若く、父の側女ビルハやジルパの子供たちと一緒にいた。ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した。 37:3 イスラエルは、ヨセフが年寄り子であったので、どの息子よりもかわいがり、彼には裾の長い晴れ着を作ってやった。 37:4 兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。
>>>今回の主人公のヨセフ、その名前はイエスのお父さんの名前と一緒です。ヨセフと主イエスとの関連が冒頭から示唆されています。ヨセフには弟を含め、11人の兄弟がいました。しかし、ヨセフだけが父のヤコブに特別扱いされることに兄たちの妬みを買います。主イエスも群衆から特別扱いされて律法学者たちに妬みを買います。また、ヨセフが兄たちの過ちを告げ口したように、主イエスは律法学者たちの過ちを人前で非難しました。どちらの場合も、それらのことを通してやがて殺意へと発展していく所まで似ています。
37:5 ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語ったので、彼らはますます憎むようになった。 37:6 ヨセフは言った。「聞いてください。わたしはこんな夢を見ました。 37:7 畑でわたしたちが束を結わえていると、いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」 37:8 兄たちはヨセフに言った。「なに、お前が我々の王になるというのか。お前が我々を支配するというのか。」兄たちは夢とその言葉のために、ヨセフをますます憎んだ。
>>>ヨセフは、自分が兄たちの上に立つようになる特別な存在であるかのような夢の話をして、兄たちの恨みをさらに買います。主イエスも数々の預言を通し、自分が神から遣わされた特別な存在であることを語り、律法学者たちの恨みを買っています。なお、主イエスの父ヨセフも夢で将来についての“み告げ”を聞いています。
37:9 ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。「わたしはまた夢を見ました。太陽と月と十一の星がわたしにひれ伏しているのです。」 37:10 今度は兄たちだけでなく、父にも話した。父はヨセフを叱って言った。「一体どういうことだ、お前が見たその夢は。わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか。」 37:11 兄たちはヨセフをねたんだが、父はこのことを心に留めた。
>>>ヨセフはさらに、自分が将来、両親や兄弟よりも大いなる存在になることを預言します。これに対して父のヤコブは、反発しながらも息子の夢を心に留めています。少し状況は違いますが類似した話として、マリアも自分の子どもに関わる、信じられないような天使からのみ告げを心に留めたことが語られています。ヨセフ物語は今後もこのように、主イエスとの数多くの関連性を示しながら話が展開していくことになります。
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