西川口キリスト教会 斎藤信一郎牧師
『イエスはすぐ彼らに話しかけられた。「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない。」』 マタイによる福音書14章27節
親戚にあたるバプテスマのヨハネの殉教の報告を受け、祈るために人里離れた場所に移動しようとした主イエスでした。しかし、後を追って来た群衆を哀れに思い、予定を変更して彼らに5つのパンと2匹の魚で空腹を満たした主イエスでした。それから弟子たちを強いて先に船で対岸へと出発させ、自らは祈るために山へ退きます。
先に船で出発した弟子たちは夕方前に出発したものの、数スタディオン=500m~1.5kmほど進んだところで夜明け近くまで嵐のためになすすべもなく命の危険を感じながら荒波に揉まれていました。その時、暗闇の中から湖の上を歩いて主イエスが近づいてきます。これにすぐさま反応したのがペトロでした。主イエスが命じて下さるならば必ず湖の上を歩けると信じ、主イエスのところに行くことを願い出ます。「来なさい」と受け止めて下さる主イエス。始めこそ主イエスに目を据えて数歩進み出たペトロでしたが、荒れ狂い続ける波と風の現実に気を取られて沈みだし、主イエスに助けを求めます。主イエスはすぐさま手を伸ばして彼を助け、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と彼を諭します。
私たちの人生にも似た状況が繰り返し訪れます。逆風、足元がぐらつく出来事、見通しの利かない暗雲立ち込める状況の中でもがき苦しむあまり、主イエスへの信仰がいつの間にか「幽霊」のように非現実的になってしまうことがあります。その時、主イエスは上記27節のように言葉をかけて下さるお方です。しかも、私たちが正しく主イエスに向き合う時、共に嵐に向き合って下さるお方です。以前(8章23節以降)にも同じように荒れ狂う海上で成すすべがなく恐怖に包まれていたところを主イエスに助けていただいた弟子たちでしたが、今回の弟子たちの反応は違っていました。33節には『舟の中にいた人たちは、「本当に、あなたは神の子です」と言ってイエスを拝んだ。』とあります。以前には開かれていなかった新たな主イエスに対する信仰の扉が開いて行く瞬間です。私たちのことをいつも見守り、執り成し祈り、共に歩んで下さる主イエス・キリストに感謝します。