西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。 (創世記 10章1節)
聖書の系図は単なる家系が順序良く記録されているものとは異なり、そこに神のメッセージが込められています。聖書の巻末にある聖書地図1「聖書の古代都市」を参照すると、今回の箇所に登場するアダムの子孫の名前が地名として登場しています。これを参照するとヤフェトは現在のトルコやギリシャから始まる西ヨーロッパおよび反対のカスピ海側の東方に広がったことが伺えます。ハムは現在のイスラエルを始め、エジプト、リビア、スーダンとその下のエチオピアおよび紅海をまたいでアラビア半島に広がって行きます。そしてセムはヤフェトの領地に挟まれた形でチグリス・ユーフラテス川沿いに子孫が広がったことが語られています。地図上方にはノアたちの箱舟が止まったとされるアララト山を示す表記もあります。この近辺に長男セムの子孫、その両側に三男ヤフェトの子孫、そして南方に次男のハムの子孫が増え広がって行ったことになります。
ただし、この流れはハムの子孫ニムロデから変化が生じています。ニムロデは祖父たちの土地を離れて北上し、セム一族の地域に侵入しています。8節には「地上で最初の勇士となった」とあり、彼が事実上古代メソポタミア地方の統一王国の基礎を築いた人物として語られています。ノアの子孫はその後、時代によってある時は支配者、ある時は支配される側になりながら世界の歴史を動かしていくことになります。しかも、地図に見るそれぞれの子孫の広がり方では、ヤフェトの子孫はユダヤ教から独立していくキリスト教諸国、ハムの子孫はイスラム教諸国、そしてセムの子孫はイスラエルおよび世界に離散していくユダヤ教徒の歴史を暗示しているようでもあります。
いずれにしても主イエス・キリストの出現以来、世界の流れに決定的な変化が訪れます。マタイによる福音書の系図に見る通り、イエスの系図には異なる民族が意図的に含まれています。神は御子を通してすべての人を神の家族の一員に招いておられることが示されています。私たちもその一員として招かれていることを感謝しましょう。