西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
『ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす献げ物として祭壇の上にささげた。』創世記8章20節
ノアの時代に全世界の山々が完全に覆われるほどの洪水が起きたと伝える聖書。神の指示に従って箱舟に入って命拾いしたノアの家族と生き物たち。聖書は神が彼らを見守り続け、約一年かけて水が再び元に戻るようにされたことを語ります。
水が次第に減っていき、山々が姿を現し、箱舟もアララト山に止まると、ノアが地上の様子を知るためにカラスや鳩を飛ばします。何度目かの試みで鳩がオリーブの葉をくわえて戻って来ます。オリーブの木は永遠の命を象徴します。その葉をくわえて平和を象徴する鳩が戻って来るところにも希望が伺えます。また新約聖書の中でイエスがヨルダン川でバプテスマを受けた時に、聖霊が鳩のように下って来る場面を連想させます。他の全ての鳥と生き物たちがノアの家族と共に最後の最後に箱舟から出ることが赦されたのに対して、オリーブの葉をくわえて来た鳩だけは、途中で戻って来なくなるのも象徴的で印象に残ります。
箱舟から出ることを赦されたノアたち。その時、最初にノアがとった行動は驚くものでした。せっかく共に洪水を生き延びた生き物たちの中から、ノアは祭壇を築いてその上で焼き尽くす献げ物としたのです。この真意を理解するのは現代に生きる私たちには非常に困難ですが、そこには罪のあがないを感謝して礼拝するという旧約聖書時代の重要な教理が現れています。その後、イエス・キリストの時代まで続くことになるユダヤ教の礼拝儀式ですが、そのような命を犠牲にする礼拝の在り方に終止符を打つためにキリストが全人類、全被造物の罪のあがないとして十字架の死を遂げられたというのが、新約聖書の中心思想です。
すべての命を大切にされる神が、ご自身のひとり子を十字架に架けてまで、人類と被造物の罪をあがない、永遠の滅びから救おうとされるのです。この神の愛に心から感謝して新年も共に礼拝しましょう。