西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
今月の主題…「神の臨在と祝福の中に生きる幸い」
◆詩編について・・・その3
46編は、42編から始まり、72編まで続く詩編の第二巻(新共同訳聖書ではこの区切りがありません)に属する部分です。第二巻の最初の数編は前回解説したコラの子たちが関わる詩編が集中します。アラモト調とは口語訳聖書で「女の声のしらべに合わせて」と訳されています。少女たちが歌うソプラノの音域が特徴のものと考えられます。
46編の文中に三回「セラ」と表記されている箇所があります。詩編全体では39の詩編に71回登場しますが、正確な意味は不明です。音楽的な休止符(あるいは間奏が流れる箇所を示す記号)の役目をしていたのではないかと考えられています。
<原則として、ご自分で聖書本文を読み、黙想してから以下の文章、聖書教育誌、その他の参考文献を読むことをお奨めします。また、黙想の際に聖書地図で確認し、違う聖書訳を比較して読むこともお奨めします。>
※『聖書教育』誌は日本バプテスト連盟発行の教会学校教案誌です。詳細は下記のURLでご照会下さい。 http://www.bapren.com/index.html (『聖書教育』ホームページ)
◆黙想のポイント
コラの子たちの詩編では、敵に苦しめられている現実のただ中で、それでもなお神への信頼と賛美が貫かれています。46編は聖書教育誌でも言及しているように、新生讃美歌538番・・・1529年に宗教改革者の一人、マルチン・ルターが作詞作曲した有名な「神はわがやぐら」の元になった詩編です。その賛美歌の歌詞を合わせて黙想するのもいいでしょう。また、自分の好きなメロディーを口ずさみながら、46編を朗読すると、臨場感が増し、当時の情景が理解しやすくなります。時間の許す方は詩編42~49編まで続くコラの子の詩全体に流れる、試練の中での神賛美を味わうことをお薦めします。
◆本文
46:1 【指揮者に合わせて。コラの子の詩。アラモト調。歌。】
46:2 神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。
46:3 わたしたちは決して恐れない/地が姿を変え/山々が揺らいで海の中に移るとも
46:4 海の水が騒ぎ、沸き返り/その高ぶるさまに山々が震えるとも。〔セラ
>>>神は苦難の時にこそ、そこにいて助けて下さると告白する詩です。どんなに地上が揺さぶられるような災いに遭遇したとしても、決して恐れる必要はないと賛美する神への絶対的な信頼が表現されている詩です。
・・・実際には様々な試練と不安のただ中にあって書かれた、信仰を奮い立たせる賛美だったのではないかと考えられます。神に見捨てられているように感じる現実だから、神に不平・不満をぶつけるというような信仰姿勢とは違い、神を信頼し抜く力強さに満ちた賛美が、当時の人々に新たな力と希望を与えたことが想像できます。
46:5 大河とその流れは、神の都に喜びを与える/いと高き神のいます聖所に。
46:6 神はその中にいまし、都は揺らぐことがない。夜明けとともに、神は助けをお与えになる。
46:7 すべての民は騒ぎ、国々は揺らぐ。神が御声を出されると、地は溶け去る。
46:8 万軍の主はわたしたちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。〔セラ
>>>苦しいときこそ、下を向きがちですが、上を向いて神を仰ぎ見ていこうとする信仰姿勢がこの詩編全体を貫いています。神が世界を見渡せる天の高い聖所からすべてを把握しておられ、あと少しで救いの御業が開始されることを待ち焦がれる賛美となっています。このような位高き神であるにも拘わらず、その神が時代を越えて私たちと共におられるという信仰がこの詩編の強調点になっています。12節の繰り返しがそれを物語っています。
46:9 主の成し遂げられることを仰ぎ見よう。主はこの地を圧倒される。
46:10 地の果てまで、戦いを断ち/弓を砕き槍を折り、盾を焼き払われる。
46:11 「力を捨てよ、知れ/わたしは神。国々にあがめられ、この地であがめられる。」➔口語訳では・・・「静まって、わたしこそ神であることを知れ。わたしはもろもろの国民のうちにあがめられ、全地にあがめられる」。
46:12 万軍の主はわたしたちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。〔セラ
>>>神が最終的に実現して下さろうとしている絶対的な平和。それまで忍耐強く待ち続けようとの呼びかけが歌詞に現れています。緊張と不安のただ中にあっても、一切を神に委ね、力を抜き、静まって、決して裏切らない救いの神に想いを集中させ、ただひたすらに神を賛美する信仰姿勢がうかがえる詩編です。
◆話し合いのポイント・・・聖書教育誌は、現代の世の中の社会情勢や環境の急激な変化、見通しの利かない状況のただ中で不安と戸惑いを覚える私たちに対して、今回の詩編が指し示す神への信頼の仕方、力の捨て方から学ぶことを励まし、ヒントも示しています。具体的にどう日常の中で実践できるのでしょうか。共に分かち合いましょう。