斎藤 信一郎 牧師
<原則として、ご自分で聖書本文を読み、黙想してから以下の文章、聖書教育誌、その他の参考文献を読むことをお奨めします。また、黙想の際に聖書地図で確認し、違う聖書訳を比較して読むこともお奨めします。>
※『聖書教育』誌は日本バプテスト連盟から発行されています。詳細は下記のURLでご照会下さい。 http://www.bapren.com/index.html (『聖書教育』ホームページ)
◆黙想のポイント
今回の箇所は、ペトロが主イエスの弟子であることを否定するという彼自身も予想していなかった方向に話は展開していきます。そのようなペトロに主イエスが向け続けるまなざしに注目しましょう。そのまなざしは現代に生きる私たちにも向けられています。
◆ペトロの離反を予告する
22:31 「シモン、シモン、サタンはあなたがたを、小麦のようにふるいにかけることを神に願って聞き入れられた。22:32 しかし、わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った。だから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
>>>サタン(悪魔)は、人類の祖であるアダムとエバが神に背くように誘惑して以来、それ以前にあった自由が奪われ、地を這いずるという制限の中で生きなければならなくなりました。31節の言葉は、サタンが神の定めた範囲の中でしか、人間に対し、自分の思うままに影響を与えることができないことが逆説的に表現されています。それでもサタンがもたらす影響は甚大であり、人間にとって脅威です。それにより、ペトロの信仰の挫折も避けて通れません。しなしながら32節にあるように、主イエスの執り成しの祈りが先行していることは、人類への希望です。これにより、人間の負の現実さえも最善の方向に変えられていくのです。しかも、主イエスは信仰の挫折を経験し、立ち直った後のペトロの信仰にも目を注いで下っています。そんなまなざしを、主イエスは私たちにも注いで下さっているのです。
22:33 するとシモンは、「主よ、御一緒になら、牢に入っても死んでもよいと覚悟しております」と言った。 22:34 イエスは言われた。「ペトロ、言っておくが、あなたは今日、鶏が鳴くまでに、三度わたしを知らないと言うだろう。」
>>>ペトロは主イエスが「ご一緒なら…」投獄も、死も覚悟できると言いました。主イエスへの絶大な信頼が伺えます。しかし現実的には、この後のペトロのように、主イエスから引き離された状況になることがしばしばあります。そういう時こそ、サタンの容赦のない攻撃が私たちを襲います。聖書で「三度」と表現される時は、「何度も繰り返す」という意味があります。再三に渡って主イエスの弟子ではないかのような言動をしてしまったペトロ。私たちの現実にも当てはまります。主イエスとは何の関係も持たず、クリスチャンではないかのような言動をしている現実が、私たちの日常にどれくらいあるでしょうか。人ごとではなくなります。
◆イエス、逮捕されるペトロ、イエスを知らないと言う
22:54 人々はイエスを捕らえ、引いて行き、大祭司の家に連れて入った。ペトロは遠く離れて従った。 22:55 人々が屋敷の中庭の中央に火をたいて、一緒に座っていたので、ペトロも中に混じって腰を下ろした。 22:56 するとある女中が、ペトロがたき火に照らされて座っているのを目にして、じっと見つめ、「この人も一緒にいました」と言った。 22:57 しかし、ペトロはそれを打ち消して、「わたしはあの人を知らない」と言った。 22:58 少したってから、ほかの人がペトロを見て、「お前もあの連中の仲間だ」と言うと、ペトロは、「いや、そうではない」と言った。 22:59 一時間ほどたつと、また別の人が、「確かにこの人も一緒だった。ガリラヤの者だから」と言い張った。 22:60 だが、ペトロは、「あなたの言うことは分からない」と言った。まだこう言い終わらないうちに、突然鶏が鳴いた。 22:61 主は振り向いてペトロを見つめられた。ペトロは、「今日、鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われた主の言葉を思い出した。 22:62 そして外に出て、激しく泣いた。
>>>61節には、主イエスの預言通りになった瞬間に、主イエスとペトロの目と目が合う場面が描かれています。預言されていたこととは言え、主イエスを裏切ってしまう現実は、ペトロにとってさぞつらい出来事だったことでしょう。その時にペトロに向けられた、主イエスの愛と憐れみと赦しに満ちたまなざしを想像します。ペトロはいたたまれなくなって外に出て、激しく泣きます。ただし、それは単に後悔だけの嘆きではなかったのではないでしょうか。主イエスが注ぎ続けて下さった愛のまなざしが、希望を奪い去ろうとしたサタンからペトロを守り続けたことでしょう。主イエスは今も私たちに同じまなざしを向けて下さっていることに感謝します。
※サムネイル画像はこちらよりいただきました↓
CCXpistiavosによるPixabayからの画像