2017年8月2日 祈祷会・教会学校 聖書箇所 創世記6章5-22節「ノアの箱舟造り」
西川口キリスト教会 斎藤 信一郎 牧師
総合テーマ 「神の忍耐と決断」…あなたが忍耐を長く強いられる時、怒りを抑えることができずに感情を表に出して周りを巻き込んだことはないでしょうか。今回の箇所の共通点は、神の長い忍耐が見られることです。そして、時期を見計らって行われる解決のための決断があります。それはどのようなものだったでしょうか。その時の態度にも注目しましょう。また、主イエスの態度と比べて見ましょう。これらを通してクリスチャン生活の課題とチャレンジが見えて来ます。
◆前回からの流れ
エデンの園を追放されたアダムとエバでしたが、4章では、その息子たちの話しに移ります。続く5章ではノアと三人の子どもたちの誕生までの系図が示されます。そして6章冒頭には神の基準を無視し、美貌や名声を重視する価値観で生きる人々で世界が埋め尽くされて行ったことが語られます。そして今回の箇所へとつながります。
黙想のポイント
・主題に沿って黙想しましょう。ただし、1節~4節には後の節を理解する上で重要な内容が含まれるため、その部分も目を向けて置きましょう。
◆今回の箇所の直前…
6:1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。
6:2 神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。
>>>2章で学んだ原則は神が互いに補い合い、支え合うことを喜び合える結婚相手を導かれるというものでしたが、ここでは神との関わりが語られていません。神の導きや御心を求めないで、自分勝手に結婚相手を選ぶ当時の人々の様子が伺えます。ある注解書では、神の子らとはセトの子孫で、人の娘たちというのはカインの子孫のことだと推測しています。当時の男性たちが神の導きや御心よりも見た目の美しさに魅かれている様子が伺えます。そのため、次の節のような言葉が登場していると考えられます。
6:3 主は言われた。「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。
>>>この後のノアの子孫から段階的に平均寿命が短くなっていき、ヤコブの子どもたちの時代になって、神の預言が成就していくことになります。本来ならば、歳を重ねるごとに罪から離れ、神の御心により一層忠実に生きるようになればいいのですが、当時の人間は長寿であったと同時に、歳を重ねるごとにより罪深くなって行くという深刻な事態が神の目に映っていたようです。そこで、世界を直ちに滅ぼす代わりに、神の憐みによって人間の一生が120歳と改められ、この期間に罪を悔い改めて神の目に正しい人生に立ち返る猶予を与えられたことが語られます。神を無視し、急速に堕落していく人類を見つめる神の心中は想像に余るものがあります。
6:4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、神の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。
>>>ここで神の子らと表現さているからと言って、彼らが神の御前に正しく生きていたということを意味しません。むしろ、時代はこの世的な功績を称賛するようになっていたことを物語っています。神の御心にどれだけ忠実かではなく、ここにも神なしに人生を競い合って、人より秀でた存在になろうとする人々の姿が映し出されています。このような時代背景が人類を創造したことさえ、後悔させるほどの悲しみを神に与えたことが語られます。
◆ここから今回の箇所…
6:5 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、
6:6 地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。
>>>神の子らであるはずの人間たちが、急速に堕落していく様を見続けた神の無念さと人類への途方もない忍耐を想像しましょう。
6:7 主は言われた。「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」
>>>罪の影響がその後も人類だけでなく、他の生き物にも深刻な影響を及ぼしていることが読み取れます。それがさらにどれだけ神を悲しませたことでしょうか。
6:8 しかし、ノアは主の好意を得た。
>>>このような世界の中で、一筋の光をノアを通して見ることができます。
6:9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。
>>>特に注目したい言葉は、ノアが「神と共に歩んだ」という言葉です。エノクの時に用いられた聖書の中心テーマとなっている言葉がここでノアに用いられています。
6:10 ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。
6:11 この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
6:12 神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。
>>>神はどのような思いで地を御覧になったのでしょうか。罪のもたらす人類への影響の凄まじさを聖書は繰り返し強調します。
6:13 神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。
>>>この節には聖書全体に通じる神の物事の進め方の特徴が伺えます。神は御業をご自分だけでされません。必ず、自分に忠実な人間を選び、その者にこれからの計画を事前に知らせ、協力するようにされます。この時に神に選ばれたのはノアでした。
6:14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。
>>>神がノアに造るように要請された箱舟は、現代社会の様々な洪水に悩まされている私たちへも神の御業への協力を呼び掛けられる内容であり、示唆に富んだものです。現代の洪水とはなんでしょうか。ある人は仕事の洪水におぼれそうになっているかも知れません。ある人は時間の洪水に押し流されているかも知れません。ある人は情報の洪水など、私たちは神から目を背けさせる様々な洪水に直面させられているのではないでしょうか。神はその危機に立ち向かうことを呼び掛けておられます。そして、それに立ち向かう方法まで示唆して下さっています。箱舟は教会を指すと考える人もいます。それでは箱舟の中に水が浸入してこないように、私たちの日常生活における防水の役割を果たすタールとは何でしょうか。祈りや賛美で強化された壁かも知れません。
6:15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、
>>>神は自由に箱舟を造るようにとは指示を出しません。箱舟の寸法は神が支持されました。今日、この寸法は船舶が最も安定して浮き続けるための黄金律として世界中で用いられている比率です。また、三百アンマとは、約135mの長さです。現代のフェリーは200m前後ですからそれよりも短かったようです。しかし、東京ドームのホームベースからセンターの外野席までの壁までが122mですから、そんなに小さいものでもなかったことが分かります。それを少人数で箱舟を造るのですから、かなりの重労働だったと考えられます。
6:16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。
>>>神は詳細に箱舟の設計図をノアに伝え、その設計図通りに箱舟を造るように指示されました。その箱舟には他の生き物たちを救うための生活空間も計画に入っていました。神はノアたちを用いて他の生き物たちの命も救うように指示を出されたのです。
6:17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。
>>>今後起きることになる神の実行計画がノアに知らされます。これも聖書の神の特徴の一つです。
6:18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。
>>>聖書で何度も登場する契約概念ですが、ここに初めて登場します。
6:19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。
6:20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。
>>>実際には、ノアたちは動物たちのための居住空間を準備するだけで、動物たちを世界中から見つけ出し、箱舟まで連れてくる必要はありませんでした。それは神自らが行って下さったことがこの後ではっきりします。
6:21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい。」
>>>神の細部まで行き届いた指示が続けて語られます。
6:22 ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。
>>>最後にノアが忠実に神の命令を実行して行ったことが語られます。世の中が神を無視し、自分勝手に生きるようになってしまった時代に、神の御心に従っていきることがノアと家族にとってどれほど困難だったことでしょう。陸の上に途方もなく大きな船を造るのも、少人数のノアたちにとっては骨の折れる作業だったことでしょう。また、周りの人々にどれだけ馬鹿にされ、非常識呼ばわりされたことでしょうか。一方では、その機会を利用して神の裁きと救いについて宣教する機会を得ることができたノアたちの宣教活動も想像できます。箱舟造りは神がノアたち家族に与えられた人類への最後の宣教の機会にもなったと考えられます。現代に生きる私たちが置かれている環境、そして与えられている宣教の課題についても考えさせられる今回の箇所です。
分かち合いのポイント
・今月の主題について自由に分かち合いましょう。
<参考> 今月の4週の聖書教育誌採用箇所は棒線で示します。
4章)◆カインとアベル…カインとその末裔レメクまで
5章)◆アダムの系図…ノアと三人の子どもたちの誕生まで
6章)◆洪水…箱舟を造り、すべての肉なるものから二つずつ箱舟に連れてくるよう命じられ、果たすノア
7章)箱舟に入り、洪水150日まで
8章)雨が降りやみ、アララト山に止まり、外へ出て祭壇を築くノア
9章)◆祝福と契約…契約の虹
◆ノアと息子たち…ノアの裸事件、ノアの死950歳
10章)◆ノアの子孫…系図
11章)◆バベルの塔…
10節~◆セムの系図
27節~32節◆テラの系図