聖書研究
2016年11月20日
ダニエル書 第7章15-28節
はじめに
ダニエル書を大別する2つの部分。
第一部:1-6章 ダニエルとその三人の友人たちの異邦の地バビロンにおける出来事
第二部:7-12章 幻をもって語られる将来についての預言
今回の第7章は幻をもって語られる将来についての預言の、一番はじめの章であり、神様によって大パノラマ(広大な世界)がダニエルに示されます。
☆どのような幻であったか、ぜひ第7章1節~14節も併せてお読みください。
7:15 わたしダニエルは大いに憂い、頭に浮かんだこの幻について悩まされた。
7:16 そこに立っている人の一人に近づいてこれらのことの意味を尋ねると、彼はそれを説明し、解釈してくれた。
>>ダニエルは何を憂いたのでしょうか?意味を解釈できなかったことに悩んだのでしょうか?むしろ、漠然とした不安、暗澹たる思いを肌で感じつつも、神の幻、神のことばは自らの知恵と力でその意味を理解することはできないものであり、神ご自身がその意味を教え、明らかにしてくれるのでなければ、その一部分さえ理解できないということを、誰よりダニエルが知っていました。そのような謙遜なダニエルだからこそ彼は「神の人」であり、そこに立っている人の一人(天使)が解釈してくれます。
7:17「これら四頭の大きな獣は、地上に起ころうとする四人の王である。
7:18 しかし、いと高き者の聖者らが王権を受け、王国をとこしえに治めるであろう。」
>>四人の王とは、それぞれバビロン、メド・ペルシャ、ギリシャそしてローマという説もあります。いずれも強大で絶対的な権力をほしいままにし、イスラエルの民は幾度となく支配され、ユダヤの民は敗北を喫します。民は主なる神から引き剥がされ、絶望のうちに異教の神々に服従させられることを余儀なくされます。しかし、それらの国の権力による支配もイエス・キリストの御国が来るまでであり、その時には、神の聖徒たちが国を受け継ぎ、永遠にその国を保って代々限りなく続くという、神様の勝利の希望を伝えるものでした。
7:19更にわたしは、第四の獣について知りたいと思った。これは他の獣と異なって、非常に恐ろしく、鉄の歯と青銅のつめをもち、食らい、かみ砕き、残りを足で踏みにじったものである。
7:20その頭には十本の角があり、更に一本の角が生え出たので、十本のうち三本が抜け落ちた。その角には目があり、また、口もあって尊大なことを語った。これは、他の角よりも大きく見えた。
>>第四の獣は、ローマ帝国であるという説をとるならば、大変強大な帝国であり、イエス様はまさにその時代にお生まれになり、十字架にかかられました。そして使徒をはじめ、多くのキリスト者が徹底的に迫害されます。いずれにしても、第四の獣の時代はこれまでにない恐ろしい迫害の時代であることが語られます。
7:21見ていると、この角は聖者らと闘って勝ったが、
7:22やがて「日の老いたる者」が進み出て裁きを行い、いと高き者の聖者らが勝ち、時が来て王権を受けたのである。
>>「日の老いたる者」これは、神様の呼称であり、永遠に永らえる者を意味するものと考えられます。
7:23さて、このひとはこう言った。
「第四の獣は地上に興る第四の国/これはすべての国に異なり/全地を食らい尽くし、踏みにじり、打ち砕く。
7:24十の角はこの国に立つ十人の王/そのあとにもう一人の王が立つ。/彼は十人の王と異なり、三人の王を倒す。
7:25彼はいと高き方に敵対して語り/いと高き方の聖者らを悩ます。/彼は時と法を変えようとたくらむ。/聖者らは彼の手に渡され/一時期、二時期、半時期がたつ。
>>「一時期、二時期、半時期」という表現は特徴的です。一年、二年、半年を合わせた3年半とする時、ヨハネの黙示録13章1節~7節(新pp.466-7)に登場する獣との関連を考えることができます。10本の角に10の王冠を被ったこの獣は42ヶ月の間、活動する権威が与えられます。新約聖書のヨハネ黙示録との関連を旧約聖書のダニエル書に見出せることは、一つ注目できる点ではないでしょうか。
7:26やがて裁きの座が開かれ/彼はその権威を奪われ/滅ぼされ、絶やされて終わる。
7:27天下の全王国の王権、権威、支配の力は/いと高き方の聖なる民に与えられ/その国はとこしえに続き/支配者はすべて、彼らに仕え、彼らに従う。」
7:28ここでその言葉は終わった。わたしダニエルは大層恐れ悩み、顔色も変わるほどであった。しかし、わたしはその言葉を心に留めた。
>>ダニエルの苦悩は今なお深く心に沈んでいたことでしょう。ダニエルは外国にあって、王の官吏として仕える身です。幻に示されるように、最終的には主なる神様のご支配にあるとしても、ユダヤの民が長い歴史の中に王権や権力よって翻弄され、悪魔の支配によって人々が迫害されることがまさに神様の啓示だとしたら、彼はどうして喜ぶことができるでしょうか。しかし、ダニエルは「しかし、わたしはその言葉を心に留めた」とあります。彼の苦悩のなかにありながらの、この決意に似た「心に留めた」こととは、どのようなことなのか、話し合っていただければと思います。